天災と犬の応急処置 前編
昨年は災害の多い一年でした。
山古志村の牛や鯉を筆頭に、地震で犠牲になった動物は数え切れません。
天災とはいえ地域の経済的、精神的損失は計り知れませんでした。
また一方で、強運と速やかな処置により一命を取り留めた動物もいました。災害はいつ襲ってくるかわかりません。
モデル:桃子
モデル:ワルツ

ドッククラブ・ラサアプソ・ジャパンでは緊急特集☆愛犬は飼い主が守ろう☆と題してN市で開業されている獣医モモレンジャー先生と愛犬の桃子ちゃんに「天災と犬の応急処置」を指導していただきました。


ボンボンママ:
今日はドクコンに合わせてオスカル・コスプレで参りました。
「愛と革命」は私の座右の銘です。
このオスカル、ワンコのためなら命を捧げる覚悟でございます。
モデル犬用に家来のワルツも連れてまいりました。先生どうぞヨロシクお願いします。
モモレンジャー先生:
では最初に飼い主さんの心構えを。絶対に慌てないこと。
災害時は、パニックにならないで落ち着いて行動してください。
ボンボンママ:
わかっております。平常心なくして近衛兵連隊長は務まりません。
モモレン先生:
ワルツのような小型犬は、頭に受けた激しい衝撃により目玉が飛び出すこともあります。
ボンママ:
それは・・緑内障ですか?
モモレン先生:

いいえ。緑内障は眼圧で飛び出すのであって、このケースは眼球が丸ごと頬の辺りまでこぼれ落ちるのです。ごくまれですが。
ボンママ:

キャア!ゲゲの鬼太郎の目玉オヤジ!どないしよう〜#そうだ妖怪退治よ!
革命に血はつきもの。目玉オヤジこうしてやる〜。(ワルツの首を両手で絞めるボンママ)
モモレン先生:
これオスカル。たとえワルツが血まみれヌルヌル肉も裂け、骨が砕けても慌ててはいけま せん。目玉が飛び出し、耳から脳みそがニョロニョロ流れ泡を吹いても、飼い主たるもの毅然と行動してください。犬は主人の心を敏感に悟ります。
ボンママ:
しかし、大地震の場合ライフラインが切断し獣医へアクセスもできません。目玉が飛び出した犬を素人が自力で助けられますか?
モモレン先生:
もちろんです。目玉治療は後ほど教えますね。
【外傷】
犬の救急箱
モモレン先生:
では最初は外傷の手当てからはじめましょう。
新潟県中越地震で一番多かった事故はモノに挟まったりぶつかったり、ガラスを踏んだりという怪我でした。
普段から【犬の救急箱】を常備しておきましょう。
ガーゼ・くっつき包帯・ばんそこうテープ・ハサミ・テラマイシン軟膏、これは眼にも使えますので他の抗生物質より応用が利く。ミネラルウォーター。出来ればペコペコの外箱が望ましく、使用するとき蓋に穴を開けてください。
最初に言ったように、まずは血を見てもパニックにならないようにしてください。
ボンママ:
このオスカル、たとえ金曜日のジェイソンにチェンソーで愛犬の頚動脈を切られても冷静さを失いません。
モモレン先生:
頚部動脈切断は絶望的。でも四肢など末端の出血は応急処置が大変有効です。では前足を切ってしまったと想定しましょう。まず止血をします。
静脈を切った場合大量に出血しますが、慌てず心臓に近い箇所を布かハンカチで縛ります。このときペンなどを使ってさらにしっかり締め上げましょう。次に巻いた包帯の間にペンを入れ、ペンをグルグル3−4回廻して締め上げ、ゴムでとめます。 それからペットボトル蓋の真ん中に穴を開けます。シャワーのようにこうして傷の箇所を洗浄します。傷口に入った細菌を減らすためには充分に洗うことが大切です。
ボンママ:
もしきれいな水がなく、お風呂などの残り水しかないときはどうしましょう。
モモレン先生:
雑菌だらけの水は沸かして使ってください。
ボンママ:
オキシフルや赤チンなどの消毒薬があれば使ったほうがいいですか?
モモレン先生:
新鮮な傷口の場合は市販の消毒薬は使いません。水で洗い流すのがベストなのです。
そして長毛の場合傷口周辺の毛をカットしてください。傷口にテラマイシン軟膏をすり込み、最後にガーゼを当て包帯で巻き保護します。
ボンママ:
止血は獣医さんへ行くまで続けますか?
モモレン先生:
血が止まるまでで結構です。静脈で2-3時間くらい、通常の出血でしたらもっと短くて大丈夫。壊死を起こしますので縛りっぱなしはダメです。
ボンママ:
テラマイシンなどの軟膏がないときは代用の薬が何かありますか?
モモレン先生:
どうしても塗り薬の抗生物質がないときは病院から貰ってきた人間の風邪用抗生物質を割って中身を出し傷口に塗ってください。
1.止血 2.水で消毒 3.軟膏を塗る 4.ガーゼと包帯で傷口を保護
ボンママ:
犬が治療を嫌がって暴れたらどうしましょう。ボコボコにしてもいいですか?
モモレン先生:
誰かに保定してもらうか、噛むようでしたら紐を使います。鼻周りで結び、再び巻いて首の後ろでもう一回結んで保定ください。ボコボコはイカンよ。
ボンママ:
ガラスや釘などの物が突き刺さってしまった時はどうしますか?
モモレン先生:
全部抜いて、その後傷口を水で洗い流してください。
深く突き刺さっている物は判断が難しいのですが、そのまま長時間放置しておきますと細菌感染を起こします。
犬を安静にし、即獣医へ連絡または搬送してください。
【骨折 その1】
ボンママ:
次は骨折の応急処置をお願いします。ワルツの後ろ足が骨折しました。すさまじい悲鳴を上げて泣いています。
あんまり気の毒なので安楽死させることに決めました。
モモレン先生:
これこれ。骨折くらいでいちいち殺してはなりません。
添え木があればいいのですが、もしない場合ダンボールを切って使いましょう。非常時でもダンボールならどこにでもありますからね。

このときのポイントは、骨折した子の足に合わせて関節を作ることです。テーラーメードですから、添え木の長さと幅も合わせてください。
ボンママ:
痛いかワルツ。
モモレン先生:
ブラブラしているから痛いのであって、きちんと固定させれば苦痛は和らぎます。
このように関節に合わせてダンボールを折り曲げます。それから添え木の中にクッションになるコットンか柔らかい布などを敷きます。添え木を当てたら、全体をコットンで包み、テープで巻いて固定します。
最後にくっつき包帯を巻きます。このときの注意は下から巻いていって腰の所まで包帯を持っていって交差させしっかり固定させることです。
ボンママ:
かわいそうに・・・陵辱された深窓のワルツ!
よしよしネンネしな〜痛いの〜飛んでけぇー。
スリスリもミモミ。
モモレン先生:
お静かに!
処置が済んだら暗い場所で安静にします。
地震の際は余震が続きますので、バリケンに入れ、安全な場所に固定して置きましょう。