天災と犬の応急処置 後編
【骨折 その2】

ボンボンママ:
今度は前足骨折の応急手当を教えてください。
モモレンジャー先生:
まず犬を落ち着かせてください。もっとも骨折の場合、犬はあまりの痛さに吼える元気もないはずです。
ボンママ:
桃ちゃん落ち着いているな。先生のところで朝から晩まで受付嬢として働いているものね。ああーこんな赤切れだらけの手をしちゃって・・働けど働けど我が暮らし楽にならざる。
ふと桃ちゃんは手を見る。もう涙も枯れた、シアワセって何?
モモレン先生:
オスカル!
桃子は休日もこうしてあなたたちのために働いているのです。
ボンママ:
クィールも滅私奉公のあげく死んだのよね。
犬の黄金率って悲しい・・完璧な服従の先にあるのが過労死なんて。
モモレン先生:
あのねぇ。お宅のワルツ血糖値高いよ。最近、怠けて贅沢三昧の
あげくトン死するプー太郎犬多いのよ。
革命なんかよりランニングしろ。
ボンママ:
ワハハ、イベリコ豚にワルツ豚、美味そうだ。

モモレン先生:
さて、前足を固定する添え木ですが、ダンボールを使います。
必ず2箇所の間接部分が折り曲がるようにしてください。
ブカブカにしてはダメです。遊びがあると痛いですから。添え木は必ずその子の足に合わせてくださいね。
また前足は重心がどうしても掛かりますので、
手首より先も添え木で支えてください。
後は後ろ足の処置同様、添え木に中敷のクッションを入れ、表側もこうして包み込み、何箇所かテープで止めます。
最後に包帯できちんと保定します。こうすれば排泄などで少しくらい動いても大丈夫です。

ボンボンママ:
処置後はバリケンか動けないキャリーなどに入れて安静にさせるのですね。
モモレン先生:
ザッツ・コレクト。
【心肺蘇生】
ボンママ:
お次は、脳震盪やショックで犬が失神、あるいは心肺停止した場合の処置です。
生きているのか死んでいるのかわからないとき、どこで脈を診たら良いのでしょうか?
モモレン先生:
後ろ足の付け根の内側です。窪んでいる所に手を当ててください。心臓よりわかりやすいです。
ボンママ:
本当だ。桃ちゃん生きている。
モモレン先生:
その鼓動は、桃子の高尚な犬格と知性の音です。
ボンママ:
桃ちゃんはDog Dog-God。ワルツはチンコロケ♪チンコロケ♪
モモレン先生:
さて老犬などは、地震や雷のショックでノドに異物が詰まることもあります。
痰や嘔吐物の可能性が高いので、箸などの先に濡れたガーゼを巻きつけてノドに入れ、
かき出して下さい。
ボンママ:
友人のヨーキーの飼い主は、犬を逆さにして背中を叩いたらジャガイモが出てきたそうです。掃除機を口に入れて、詰った物を吸い出せと書いてある本もありました。
モモレン先生:
それはちょい危険です。まずは気道を確保してください。
犬の首を平行にして必ず気道をスムーズにしてくださいね。
それから心マッサージと人工呼吸ですが、大出血していたら止血が先です。
止血をしてから心肺蘇生を行ってください。
ボンママ:
では心肺蘇生の方法を教えてください。
モモレン先生:
脳震盪などの場合犬をむやみに動かしたり、目を開けて光で照らしたり、
大声を掛けたりしては絶対にダメです。
まず横になった頭をやや上げて気道を確保します。
人工呼吸と心マッサージは同時に行います。
片方の手で犬の身体を支えて動かないようし、もう片方の手で心臓を圧迫します。
人工呼吸は鼻でも口でもいいですから、しっかり息を吹き込みます。
一回息を吹き込んだら必ず口を離します。そして入れた息が出て、膨らんだ胸が元に戻ったことを確認します。心マッサージも心臓を圧迫して血液を送り出した後、必ず心臓の中に血液を戻すことです。
つまり圧迫し続けるのではなく、圧迫後は必ず圧迫した手をゆるめてください。
ボンママ:
攻めまくるだけがテクではないと。攻めて待つ。愛と同じですね。
モモレン先生:
大切なことをひとつ。
小型犬の場合強く押しすぎて、胸部骨折させないように気をつけてください。
サイクルとしては5回心マッサージ、1回人工呼吸を施します。
これを10分以上続けても呼吸が戻らないときは絶望的です。
ボンママ:
働き者でいい子だったなぁ桃ちゃん。毎日がプロジェクトXだった。
モモレン先生:
こら、桃子は死にません。
【目の応急処置】
モモレン先生:
ではお待ちかね。こぼれた目の応急処置です。ハッスルハッスル。
ボンママ:
待っていました。目玉オヤジ・真打登場!
モモレン先生:
もし何らかのショックで目玉が眼窩から飛び出したときは、できるだけ早く目を洗います。
ボンママ:
平民はパニクります。何しろ愛犬の目玉がニョロニョロ出ちゃうんだから。
慌てて目玉を抜いちゃうかもしれない。
モモレン先生:
慌てるコジキは貰いが少ない!貧が貧を呼ぶことになります。
最初に、飛び出した目をミネラルウォターで洗浄します。
ボンママ:
水道水でもいいですか?
モモレン先生:
もちろんです。今はライフラインが切断されて、水が出ない状態を想定しています。
眼球が乾かないうちにすばやく処置しましょう。
気をつけなければいけないのは眼球を傷つけないようにすることです。
洗うときに一番いいのは生理食塩水ですが無いでしょうから、蓋に穴を開けたミネラルウォターで洗浄します。それから眼球にテラマイシンをたっぷり塗ります。
いろいろな抗生物質からテラマイシンを選んだのは、テラマイシンは目にも使えるからです。次に濡らしたガーゼで目を眼窩に押し戻します。
ボンボンママ:
薬が塗りにくい場合、テラマイシンをそのガーゼに塗布してもいいのですか?
モモレン先生:
構いません。そうそうコットンは毛羽があるので使用しないでください。
濡れたガーゼで目を押し戻したらそのまま何分か手で圧迫します。
ボンボンママ:
緊張するな。手元が狂ったりしたらどうしよう。
モモレン先生:
慌てずに。犬をきちんと保定して処置すれば大丈夫です。
圧迫したら、今度は濡れたガーゼから乾いたガーゼに変え、包帯で固定します。包帯はずれないように巻かなければなりません。ただし食い込むほど強く巻いてはいけません。ひと巻きしたら顎で交差させて反対側の耳の下へ巻き、再び戻します。また巻いて今度は耳の上に巻きます。必ず耳は出してください。
そしてこのまま獣医へ連れて行ってください。
ボンママ:
桃ちゃんったら幸薄い女がとても似合っている。
人間だったらウザイけど犬だとかわいい。
モモレン先生:
桃子は尽くすタイプだから。尽くすのが桃子の自己実現なのよ。
さて目が飛び出すなんてことはめったにありません。
でもラサアプソのような小型犬には起り得るのです。
これまで3例ほど治療したことがありますが、全部小型犬でした。
このような情報があるといざという時に冷静に対処できます。
ボンママ:
他にも緊急時の応急処置はありますよね。
たとえば背中に物が落ちて脊椎を打ったとか。
モモレン先生:
それはもう素人では無理です。脊椎を打ったら、ともかく安定した板などに乗せて
獣医へ速攻しかありません。
骨折の応急処置はあくまでも四肢の下だけです。
他の箇所の骨折は早急に獣医へ。また体温が冷えていたら温めてあげること。
怪我をした犬はバリケンなどに入れ、静かな暗い場所で安静させること。
飼い主がパニックになれば犬も敏感に悟ります。
特に地震などの災害時は落ち着いて行動してください。
飼い主の冷静な判断が愛を支えるのです。
ボンボンママ:
モモレンジャー先生。桃ちゃんありがとうございました。
最後は愛が勝つのですね。
※テラマイシン眼軟膏は2005年3月で製造中止になりました。ただしテラマイシン軟膏はあります。眼薬より濃度が濃いので、薄く使えば問題ないそうです。
モモレンジャー先生
モデル:桃子
モデル:ワルツ
ボンボンママ