★★★ ペットフードは無法地帯(後編) ★★★
坂本 本当のことを知りたければ、やはり自分で確かめるしかない。
そこで「ペットフードで健康になる」を書くに際し、フードの作り手たちを直接訪ね歩きました。従って本には、代表者の方が取材に応じてくれたところ、工場や原材料を見せてくれたところを中心に取りあげています。

五十嵐 コマーシャルなどでよく見る大手メーカは載っていませんね。

坂本 有名な大手メーカのフード工場はほとんどが海外にあります。
けれど一般に公開されることはありません。さらに原材料の工場となると、輸入代理店の人たちでも見たことがないんじゃないですか? 
そこではレンダリングが行われているからです。レンダリングとは死んだ動物や病気の動物たちの肉を集めて混ぜ合わせ、高温高圧をかけて油脂と肉骨粉をつくることです。

アン・N・マーチンの本「食べさせてはいけない!ペットフードの恐ろしい話」(白楊社)にレンダリングの実態が詳述されています。

「レンダリング工場では食肉処理場からきた原料〔処理場に運ばれる前に死んだ動物たち、頭部や足、毛根骨や足根骨、毛、羽毛、乳腺が、死骸に高レベルの薬物や殺虫剤が入っている原料がレンダリング工場へ運ばれます。癌組織や腫瘍、寄生虫に感染した器官が、汚染された血液が、充血部位や血痕、骨の破片あるいはそこに付着したもの。
つまり食肉の産業廃棄物は全てレンダリング工場行きとなるのです。〕
そのほかに、レストランやスーパーマーケットが出したゴミ、死んだ家畜、路上轢死動物、安楽死させられた犬や猫などのコンパニオン・アニマルが巨大な容器に投げ込まれます。そして機械がこれらの原料を砕き、その後104℃から132℃の間で20分から一時間加熱処理します。すると脂肪や獣脂が上に浮いてくるので、これらを取り出します。
これがペットフードに含まれている動物性脂肪の元になるのです。
最後に残った原料は加圧して水分を搾り出し、肉骨粉になるのです。」
坂本 日本で販売されている有名フードの多くは、海外のこうしたレンダリング工場でつくられた肉骨粉を原材料としてつくられています。各メーカはこの肉骨粉に自社のオリジナルの材料や添加物をくわえてフードとして完成させるのです。

五十嵐
 安価なフードはそうやって大量生産されているのですね。
実は、私が以前飼っていたチャウチャウはすさまじい皮膚病でした。
動物病院のハシゴをしましたが、どこへ行っても同じ検査を繰り返されたあげくステロイド薬とシャンプー、そして処方食のフードを出されました。
その際必ず言われたのは、「ドックフードは完全食ですから他のものは与えないように」という指導でした。けれどステロイド薬を止めるとすぐ皮膚病が再発するのです。
皮膚病の皮膚の上に皮膚病ができ、化膿してボロボロでした。
そんなある日、トリマーの方から友人のプードルが交通事故に遭い、
手術のため麻酔をかけたがまったくきかず、死んだと聞かされたのです。
原因はそのプードルがステロイド漬けだったからです。そこで別な獣医師を紹介されました。
そして、そこで初めて「ドックフードをお止めなさい」と言われたのです。
今までドックフードは総合栄養食だの、完全食だのと啓蒙されてきたのですが、
その先生は「ドックフードを毎日食べさせるということは、人間に例えると毎日インスタントラーメンのようなものを食べているに等しい」とおっしゃられました。
特にドックフードに含まれている莫大な量の添加物は、
ラーメンの比ではないと教えてくださいました。
「チャウチャウの皮膚病についてはwanko-amiオーマイ・ドックのマオ編に掲載」 http://www.wanko-ami.com/

以来手作り食に徹しチャウチャウは14才まで生きました。現在ラサアプソを5頭飼っていますが、パン、肉、煮た野菜、オカラをベースにしています。
内蔵疾患は一切ありません。
坂本 化学物質の怖さというのは、データや数値だけでは測れない。
それは徐々に体内に蓄積されていき、いつか許容量を超えて身体を蝕むというものです。早い段階で症状が現れる場合もありますが、犬や猫が5歳〜6歳になった頃から一気に噴出するというケースが多いと思います。

五十嵐 レトリーバー系の癌が異常に増えていますね。

坂本 化学物質は体外に排出されず、きっちり残っていきますから癌とも無縁ではないと思います。他の生活習慣病もそうです。
すると動物病院では尿路疾患にはコレ、アレルギーにはコレ、腎臓病にはコレと判で押したように処方食のフードが出されます。処方食は市販のフードよりも高価ですが、高い処方食も安価なフードも作っているのも同じメーカなのです。これを自分で火を点けて消す「マッチ、ポンプ」だと指摘する獣医さんもいます。

五十嵐 臨床に携わっている獣医師は、食に関して問題意識を持たないのでしょうか?

坂本 たとえ疑問を持ったとしても、どれが安全なフードなのかがわからない。
とくに勉強したわけではないので、彼らも表示されているデータに頼るしかないのです。その意味では、素人の飼い主さんとまったく同列ということですね。

五十嵐 動物病院の待合室にフードが並び、かわいい犬たちがフードを食べているCMを見ていたら洗脳されてしまいます。即ち「ドックフードは犬に良い」と。

坂本 CMはあくまで企業の戦略、公平性のある情報ではないんですけどね。
外資系のフードメーカは、こうしたCMに莫大な予算を投じて日本に市場を開いてきました。日本人には、テレビで宣伝している大企業に間違いはない、獣医さんの言うことを聞いていれば安心だという、どこか無警戒なところがあるのでしょう。そうした海外の有名ブランドなら大丈夫という思い込みが、3800億円もの巨大なペットフード市場を作り上げてきたのです。
五十嵐 犬は家族の一員だといいながら、犬のエンゲル計数は最低です。
一方で、服だの首輪だの犬用グッズにはお金をかけています。
実際坂本さんが取材なさってみて、良いフードのコストはどれくらいが妥当ですか?

坂本
 この本に出てくる会社のフードには1キロ2,000円以上のものがたくさん出てきます。そうしたフードは多くが人間の食材を使ってつくられています。
有機農法でつくられた野菜や穀物や肉にこだわったものもある。
しかも酸化防止剤を使っていないため保存期間が短く、保存性が要求されるスーパーやホームセンターなどに卸せない。だから値段も人間の食品並みになるんです。
当たり前ですよね。

五十嵐
 値段で判断する場合の目安を教えてください。

坂本
 1キロ1,000円以下で売られているフードは、あまりよい材料が使われているとは思えません。輸入されてくるものならなおさらです。
たとえば町のペットショップで買うとして、それが輸入されてから店頭に出るまでを考えると、販売代理店、問屋、そしてショップのマージンが商品価格には反映されているわけですね。もちろん運輸や倉庫での保管、リパックする人件費もある。
さらに莫大な広告宣伝費を考えると、もともとの輸入価格はいくらだったのか? 
海外のメーカもそれで利益を出しているわけですから、原材料はいくらだったのかということになるわけです。

五十嵐
 うーん。納得のレンダリング工場。安かろう、悪かろう。

坂本
 ある雑誌の読者アンケートで見たのですが、愛犬の何に一番お金をかけていますかとの問いに、一番が動物病院。二番が洋服などのグッズ。
もっともお金をかけていないのが食べ物
となっていました。
動物の医療にたくさんお金を使う。これは一種の誤ったヒロイズムではないかと思うんですね。私はこの子のために高額な医療費を払った、私はこんなにこの子に尽くしてあげているという…。

五十嵐
 多いですねぇ、愛犬の病気自慢。
坂本 その一方でフードとなると、どこそこでキロいくらで売っていた、いや向こうの方が安かったと。そんな話ばかり。

五十嵐
 そういう方たちは、月に3,000円もかけていないでしょう。一食50円以下。
そういえばチャウチャウを診てくださった先生は、「フードをやめて、昔ながらの残飯で良いとおっしゃいました。」「犬なので、腸が短いから肉を多めに」と指導されたくらいです。
もっとも昔は、犬猫にはどこの家でも残飯をあげていました。
うちなんて残り物は何でも混ぜてあげていました。それでも元気でしたね。

坂本
 ですよね。そこには玉ネギだって混ざっていたかもしれないし、塩分だってけっこう高かったでしょう。

五十嵐
 塩分がダメだなんて誰が言い出したのでしょうね。

坂本
 動物園に行くと、手のとどくところに岩塩が置いてあったりしますね。
それは野生動物たちにとって塩が不可欠なものだからです。
ペットフードが日本に入ってきた頃から急に、あれはダメこれもダメ、人間が食べているものはダメ。栄養が足りない!と言われるようになった。
これらはフード会社がプロパガンダとして流した情報が一般化したものじゃないかという気がします。たしかに食べ物には摂りすぎるとよくないものがあったり、栄養バランスの悪い食生活を続けていれば、身体はおかしくなるでしょうが、私たちだって、いつもいつも理想的な食事をしているわけじゃない。毎日いろんなものを食べて、自分でバランスをとって生きているわけです。
五十嵐 しかし大型犬の飼い主は、フード派になるしかない。
今のお話ですと、犬たちは総合栄養食とは名ばかりの、廃棄物に近い材料に添加物を加えたものを毎日食べさせられているようです。

坂本
 産業動物というのは、牛であれ豚であれ鶏であれ、できるだけ早く大きくして、太らせて出荷し、人間が食するために存在していますね。
一方ペットはどうでしょう?

五十嵐
 途中で屠殺されてしまう産業動物と、ペットが同じ扱いではないはずです。

坂本 ペットの犬や猫は、家族の一員ですよね。
家族なら、できるだけ健康で長生きしてほしいと思うのは当たり前。
身体に悪いものは食べさせたくない。ベストは手作りだと思います。
だけど100%手作りでやるのは無理というなら、できるだけ良質なペットフードをあげたい。高くても疑わしい化学物質の入っていない、人間が食べてもいいような食材を原材料にした上質の物を選びたいものです。
いま日本で売られている安価なペットフードは、産業廃棄物同然の材料を使い、化学物質で保存性を高めたものが主流です。
飼い主さんたちは、フードについてもっと慎重に吟味し、自分の目で価格と内容をチェックしてできるだけ安全なものを選んでもらいたい。食べ物に費用を惜しまなければ、病気も減るし動物病院への支払いも大幅に減るはずですよ。

五十嵐
 本日はありがとうございました。